東海大学健康クラブ活動の参加者を対象として、日々に実践している運動実施頻度と運動・スポーツの促進要因と考えられる「スモールチェンジ行動」の使用頻度との関係を調査した。
対象者は、いわゆる運動行動に関するTTM理論のステージで、7割が実行期と維持期にある人々で、無関心期はゼロ、関心期は約1割であり、不定期だが運動をしている準備期と定期的に運動をしている実行期と維持期を合わせると、運動の実践者は約9割であった。
筆者が運営に参画している東海大学:健康クラブのような総合型地域スポーツクラブに所属している運動好きな人は、どのような「スモールチェンジ行動」を採用しているのであろうか。
スモールチェンジ行動とは、日常生活の中で、無理なく禁煙や運動や食生活の行動の変容を図るための心掛けのことである。
当クラブの研究倫理審査会の承認を得て、参加者(108人:男40 人、女68人)の運動を行うためのスモールチェンジ行動の活用度を調べた結果、次のような回答が得られた。
実施率の高い順に紹介すると、「自分の体力に見合った距離や量を考えながら運動を行う」73%,「一緒に運動する仲間がいる]47%,「家族や友人に定期的に運動をしていることを伝えている」39%,「家で運動グッズを目につきやすい所に置いている」37%,「近くに運動する場所があるか事前に調べてある]36%,「定期的に健診を行い、運動ができるどうか体調チェックをしている」28%,「仕事の合間など、ちょっとした時間があれば体を動かしている」17%,「天候不良の時や寒暖の差の大きい日などに、運動するときの対策を立てている」11%,「運動に関する記録を,目につきやすい所に表にして貼っている」9%の順であった。性別の実施率に有意差が認められた項目は、「家で運動グッズを目につきやすい所に置いている」(男25%,女44%:全体37%)と, 「自分の体力に見合った距離や量を考えながら運動を行う」(男85%,女67%:全体73%)の2項目のみであった。回答者の年齢は男66歳、女63歳であり、いわゆる高齢期の移行期にある健常な人々であった。
このように、日々のちょっとした心がけが、運動実施への促進要因になっていることが明らかとなった。一回30分以上・週3回実施・3カ月以上継続する運動(3033運動と称している)が、神奈川県の運動実施率の数値目標であるが、実際はその段階に達していない地域が多い。本調査の実施地域である伊勢原市は、この3033運動の段階に達しているのは、約22%である。また同市内でも居住地区による実施率の格差も最大5%と比較的に大きい。国の健康作り運動である「健康日本21」(第二次)でも、運動習慣に限らず、栄養・休養の健康づくりの対策や健康寿命の地域間格差を少なくすることが課題になっている。
(谷口)