• NPO法人 コシコシの会

アウトライン:キャリアとライフ その1

「キャリア」という言葉は「職歴、経歴」を表わし、かつてはごく一部の良い仕事やプロフェッショナルな職業をイメージさせる言葉でした。

しかし現在は、仕事の面から見た人生そのものを指す言葉として、一般的に使われています。
教育機関においては、さかんに「キャリア教育」、「キャリア設計」等の言葉が使われています。

今の学生あるいは若い世代にとって、生涯の仕事への考え方も、待っている社会の状況も以前とは全く変わっています。

21世紀の仕事と生活について、みなさんはどのように向き合いますか?

(以下、解説: 所 正文)
1.若者のキャリアとライフ

生き続けるために必要なことは3つ、
健康であること生きがいを持つこと一定の経済力があることである。
そのための基盤を20歳代のうちに築いておくべきであろう。

精神分析の開祖であるジークムント・フロイト(Freud,S.,1856-1939)は、
正常な人にできることは、働くことと愛することである」と言っている。

人生とは、社会的・文化的脈絡の中でストレスに対して積極的な対処行動をとり、愛の関係を大事にしながら、自己実現を目指して、常に自らの能力を発揮し続ける過程であると理解される。
この営みは、人生時計が止まるまで生涯を通じて続いていく。

生き続けるために必要なことは3つ、
健康であること、生きがいを持つこと、一定の経済力があることである。
そのための基盤を20歳代のうちに築いておくべきである。

「沖縄は日本の将来の縮図だ」と那覇市の人材会社社長は話す。
「台頭する新興国の若者たちは好条件の職を貪欲に求め来日する。
中国人もインド人もわずか数か月で日本の新聞が読めるようになり、言葉の壁はない」と強調する。

これに対して、日本の若者はどうか。
2010年の日本人留学者数は約58000人とピーク時の04年から3割減である。
「内向き志向」がより顕著だ。

世界を見渡すと、製造業の集積する新興国が雇用や賃金を先進国から奪う局面が続いている。
日本の若者が世界の若者と雇用を奪い合う構図が今後より鮮明になるだろう。
日本の若者が自らを磨き、彼らが活躍する環境を日本社会が整え、総力戦を挑んでいくことにより日本の未来が救える(日経新聞2013.5.5)

長い人生へ向けて、20歳代から積極的に社外の人間関係拡大に努めることが必要である。
職場の同僚との人間関係は、転職や定年退職により断絶することも少なくないため、職場とは無関係のつながりを若いうちから構築できれば好ましい。
このつながりが、やがて強力なソーシャルサポートとなる場合がある。

家族や親族とのつながりは、若い時には面倒に感じられるが、遠い将来のことを考えれば大切にしたい。
少子化が進行しているため、兄弟姉妹のみならずいとことの付き合いを大事にできれば好ましい。
つながりを絶えさせなかったことが、後々心強いソーシャルサポートになる。

人生で最も親密な関係を築くのが家族であるため、幸福感を得るためにも結婚はした方が良い。
配偶者との生活に加えて、子供の誕生により家族の深いつながりが芽生え、家族に対する強い責任感にもつながる。
そのため20歳代から30歳代前半にかけての年齢段階は、人生において大変重要である。

新卒一括採用の慣行が根強い日本の労働市場では、一度就職でつまずくと専門技術や技能を持った人を除けば再就職の道は狭い。
そんな日本での仕事に見切りをつける氷河期世代も出始めた。

シンガポールで花屋を開業した31歳の男性。
飛び入り営業で販売先を開拓した。
今では欧州有名ブランド店のショーウインドーに彼の店の花が飾られる。

今の雇用慣行では30代後半から再就職のハードルは一気に上がる。
その高齢フリーター層に氷河期世代が入り始めている。
彼らの再挑戦を受け止める雇用・労働環境をつくることは、日本の労働行政の大きな課題になっている(日経新聞2013.1.13)